btob-ecが注目を集め、市場も拡大傾向にあります。自社への導入を検討している担当者もいるでしょう。とはいえ、なかにはこれまで一般的だったbtoc-ecと具体的に何がどう違うのか、よくわからない人もいるのではないでしょうか。そこで、この記事では、btob-ecの特徴やbtoc-ecとの違い、注目を集めている理由や構築方法などについて詳しく解説します。
1.btob-ecとは何?
btob-ecのecは、Electronic Commerceの略です。これは電子商取引のことで、インターネットを介して行う商品やサービスの取引を意味します。btobは、Business to Businessの略です。つまり、btob-ecは「法人間で行われる電子商取引」のことで、btob-ecサイトは法人間の取引を行うインターネット上のサイトを指します。
2.btob-ecとbtoc-ecの違いは?
btob-ecよりも広く一般的に行われている電子商取引が、btoc-ecです。この2つは似ている面もあるものの、明確に異なるため違いをしっかりと理解しておきましょう。2つの大きな違いは、簡単に説明すると「電子商取引の相手が企業か一般消費者か」という点です。btob-ecは、先に述べたように、法人間で行われる電子商取引やそのサイトを指します。対して、btoc-ecのbtocとはBusiness to Consumerのことで、取引の対象は一般の消費者である個人です。
btoc-ecでは、取引の対象となる個人にはさまざまなタイプが存在します。商取引の相手となるのは、好みも価値観も異なる幅広い消費者です。基本的に、同じ商品やサービスは取引の対象者全員に同じ価格で売り出されます。また、実際に購入する人と商品やサービスを利用する人とが同じであったり、家族や友人などの近しい間柄だったりすることが多く、購入までの意思決定がスピーディな点が特徴です。スペックを確かめたりレビューを参考にしたりすることはあるものの、ロジカルに判断するよりは感覚的に購入するかどうか決めていることが多いでしょう。
一方、btob-ecの取引相手は法人です。取り扱う商品やサービスは高額なことが多く、購入するかどうかを決定する人と実際の利用者が異なるケースも珍しくありません。また、購入決定までには複数人が介在していることも珍しくなく、採算は合うか、費用に対する効果は高いかなどが考慮されます。そのため、購入決定までが複雑で、長い時間がかかることが一般的です。なお、取引先ごとに違う掛率で価格設定がなされていることもよくあります。
3.btob-ecが注目されている理由
経済産業省が行った電子商取引に関する市場調査によると、日本におけるbtob-ec市場の規模は2019年度で352兆9620億円にも上ります。前年比で2.5%の伸びで、毎年右肩上がりの状況です。これほどまでにbtob-ecが注目され、市場が拡大しているのはどうしてでしょうか。ここでは、その理由について解説します。
3-1.働き方改革で業務の効率化が求められていること
btob-ecが注目され、市場が拡大している大きな要因の1つとして、働き方改革が挙げられます。働き方改革は2016年に提唱された取り組みで、厚生労働省により「誰もが個人的な事情に応じて柔軟な働き方が選べるようになる改革」と定義づけられています。その背景にあるのは、少子高齢化が進み生産年齢人口が減少したことで生じた労働力不足です。このままでは国力の低下が避けられないとして、内閣が本格的に働き方改革に乗り出しました。労働力不足解消の対応策の1つとして掲げているのが、業務を効率化して労働生産性を向上させることです。また、長時間労働の解消も求めています。
そこで、法人間での商取引の効率化が図れる手段としてbtob-ecが期待されているのです。従来は、商取引を電話やFAX、メールなどの手段を活用し行ってきました。これらの方法では、いったん受け付けた注文を社内システムや担当者が管理するエクセルファイルなどに入力しなければなりません。二度手間となって時間がかかるうえ人力ミスも起こりやすく、ロスを生みやすい傾向にあります。これまでは、このような時間がかかる作業をマンパワーをフル活用してどうにかこなしてきたというのが実情でしょう。しかし、働き方改革によって時間外労働が規制されるようになり、企業にとっても業務の効率化は喫緊の課題となりました。
btob-ec用のシステムを導入すれば、発注側の企業は受注企業の在庫を確認したうえで必要な注文を入力できます。受注側は注文データをほかのシステムに入力し直す必要もなく、注文の受付から発送まで進められ、さらにデータをそのまま利用して請求書を発行することも可能です。受発注管理にかかる工程が大幅に削減されることで人手も減らせ、業務効率がアップします。
3-2.国内のitインフラが整備されたこと
国内においてITインフラが整備されたことも、btob-ecが注目される理由の1つでしょう。一般に、企業の多くは営業に割ける人的リソースに限りがあります。そのため、従来は取引額の大きい特定の企業に注力する傾向があり、販路を拡大するのも容易ではありませんでした。しかしながら、ITインフラの整備によって国内のどこにいてもアクセスできるようになったことで、状況が一変しました。日本全国が商圏となり、遠く離れた地域の企業など取引の対象となり得る人たちが増えたのです。
日常生活では、年齢や性別に関係なくインターネットが深く浸透し、毎日の暮らしに欠かせないものとなっています。ところが、ビジネスではどうでしょうか。いまだにアナログな方法で、社員のがんばりに頼って業務を続けている企業は少なくありません。言い換えれば、インターネットを活用したビジネスモデルによって業務効率化を図る余地があるということです。この流れで、整備されたITインフラを使ってbtob-ecを導入する企業が増えています。
3-3.デバイスが普及したこと
デバイスの普及も、btob-ecが注目を集めている理由の1つといえるでしょう。特にスマートフォンの普及により、多くの人が日常的にインターネットに接続するようになりました。そのため、インターネットを利用した取引がしやすくなったのです。このような背景から、btobの取引候補が圧倒的に増えました。
4.btob-ecサイト3つの構築手法
btob-ecの構築方法は、主に3つあります。ここでは、それぞれの特徴について解説します。
4-1.クラウド(SaaS)型
SaaSはSoftware as a Serviceの略で、クラウドで提供されるソフトウェアのことを指します。ソフトやアプリがクラウドで提供されるためブラウザの管理画面で利用でき、ユーザー側で環境を構築する必要がありません。パッケージ型と異なり、社員が使うパソコンなどの端末にソフトをインストールする必要がないため、手軽に始められ費用も安く抑えられます。さらに、クラウドで提供されるため陳腐化することがない点も大きなメリットです。
ただし、企業の状況に合わせてカスタマイズしづらい点がデメリットです。従来から利用している基幹システムなど、外部システムと連携することは難しいでしょう。ユーザー側で業務フローを見直してクラウド(SaaS)型ソフトに柔軟に合わせる必要があります。
とはいえ、現在はその利便性からクラウド(SaaS)型が選ばれる事が多くなっています。なるべく外部システムと連携可能な汎用性の高いものを選びましょう。
4-2.スクラッチ開発型
フルスクラッチは、開発会社に個別依頼してフルオーダーメイドで自社に合わせた独自システムを構築することです。実際の業務フローに合わせたシステムを構築できる点が大きなメリットでしょう。たとえば、FAXやメールによる受発注と連動させたり、もともと使っている基幹システムと連携させたりすることが可能です。基幹システムと連携できれば、全社的に受発注状況がいつでも確かめられ、一元管理が容易になります。さらに、ボタン1つでデータの移し替えができるため、人的ミスや情報漏洩のリスクも軽減するでしょう。
ただし、システムの開発には時間がかかり、費用も莫大なものとなります。優れた拡張性を持つ方法ですが、一部の大企業以外が導入するのは難しいでしょう。
5.btobのecサイト事例
btob-ecの代表的な成功事例といえば「モノタロウ」でしょう。モノタロウは工場用間接資材に特化したecサイトです。約35万点のプライベートブランド商品を含み、扱う商品は1800万点以上に及びます。取扱商品を細かくカテゴライズしてトップページに表示することで、膨大な数を扱っていながらユーザーが簡単に探している商品にたどり着ける仕様です。人気商品やシーズン商品がすぐに見つかる工夫された作りで、類似商品の絞り込みもできます。
カタログ掲載の注文コードと数量を入力するだけで注文できるクイックオーダーシステムを導入していることも特徴です。これは、注文方法が煩雑なためにカゴ落ちされる事態を防ぐのに役立っているでしょう。そのほか、最短で当日の出荷に対応している、電話、問い合わせフォーム、チャットなど複数の問い合わせチャネルを用意して質問を受け付けている、支払方法を複数用意しているなど、ユーザーの立場に立った使い勝手の良いサイトとなっています。ユーザーはストレスを感じることなく買い物を進められるでしょう。
まとめ
btob-ecを導入すると、受発注にかかる工数が大幅に削減でき、生産性を向上させることが可能です。電話やメール、FAXで受注した注文を別のシステムに入力し直すなどの手間も省け、打ち間違いなどの人的ミスも防げます。btobこそ、ecサイトを構築し活用すべきでしょう。とはいえ、フルスクラッチでは莫大な費用がかかります。まずは使い勝手の良いbtob-ecカートの導入から始めてみてはいかがでしょうか。