市場は常に変化しており、企業は時代に合わせて柔軟な対応が求められます。
近年、特に注目を集めているのが、企業間取引である「BtoB」市場です。この市場は年々拡大を続けており、企業の生き残り戦略においても拡大の背景について理解しておくことが大切です。
そこで、本記事では、BtoB市場の特徴とBtoC市場との違いについて解説します。
1.BtoB市場とBtoC市場の違いは?
BtoB市場とBtoC市場にはどのような違いがあるのでしょうか。
BtoB市場の特徴を確認していきましょう。BtoB市場は、企業間取引を行う市場であり、サプライチェーン全体に存在します。企業のそれぞれが供給者にも顧客にもなり、お互いに競い合う関係にあります。サプライチェーンとは、原材料が加工を経て顧客のもとに届くまでのつながりのことです。ビジネスシーンではこの流れを「供給連鎖」と呼びます。
BtoB市場は、少数の企業が大量の製品・サービスを購入する傾向があります。これらの企業は、市場に大きな影響力を持つ「マーケットリーダー」や「マーケットチャレンジャー」と呼ばれることも多く、売り手にとって重要な顧客となります。一方で、少数の大口顧客に依存することも多く、顧客を失うと売り手にとって大きな損失となります。
さらに、取引先を変える際に、製品・サービスの変更コスト、関係構築コスト、手続きコストなど、さまざまなコストが発生します。そのため、企業は購入前に綿密な比較検討を行い、コストパフォーマンスを重視する必要があります。
その際に、複数の部門や担当者が購入に関わるため、意思決定プロセスが複雑になります。情報収集、比較検討、見積もり依頼、交渉、契約など、多くのステップを経る必要があり、購入までに時間がかかる場合があります。
また一方では、BtoC市場と比べて需要変動が少なく、比較的安定しており、企業は定期的な発注や長期契約などを通じて、安定的な収益を期待することができます。
2.BtoB市場が拡大している背景
BtoBの市場規模はさまざまな要因によって拡大しており、その中の一つが「働き方改革の影響」です。日本では長時間労働が問題視されており、企業は問題の解決や生産性の向上が求められています。業務の効率化は多くの企業にとって急務ともいえるものなのです。
このようななか、法人間の取引効率化を図る手段として注目されるようになったのがBtoB-ECです。
従来は電話やFAXなどを使い、人の手によって取引を進める方法が一般的でした。しかし、この方法ではどうしても業務の遂行に時間や手間がかかり、以下の課題がありました。
- 手作業による入力ミス
- 伝票の保管・管理コスト
- 情報の共有・検索の難しさ
- 担当者不在時の対応遅延・業務フローの属人化
- データ分析の困難
このような場合に、BtoB-ECを導入することで受注・発注などに関する業務を効率化することができます。BtoB-ECのシステム間でデータを転記することなく、受注から発送まで進めることが可能です。受注のデータを利用して請求書の発行を行うことも可能です。
また、近年国内のITインフラが整備されたことで、これまでアナログで行っていた業務をデジタル化しやすい環境になりました。インターネット接続環境の高速化やクラウドサービスの普及により、BtoB-EC導入のハードルが大きく下がりました。
さらに、PCやスマートフォン、タブレットなどのデバイスが普及したことにより、零細企業でもBtoB-ECを手軽に導入できるようになりました。場所や時間に縛られない取引が可能になり、業務効率化に大きく貢献しています。
なお、BtoB-ECの市場規模が急拡大している背景についての詳細は、こちらの記事(BtoB-ECの市場規模が急拡大!圧倒的スピードで拡張する理由は?)も参考にしてください。
3.企業がBtoB-ECを始める理由
BtoB-EC導入は、企業にとって多くのメリットをもたらします。ここでは、主な理由を3つに分けて解説します。
3-1.競争力の強化
企業がBtoB-ECを始める理由のひとつに「競争力の強化」が挙げられます。前提として、BtoBの市場は競合他社が多い傾向にあります。たとえば、1つの製品を加工する場合でも、部品はさまざまな企業から調達することになるでしょう。その際、同じような製品を取り扱う業者、つまり競合他社が多いと、何らかのきっかけで他社と立場が入れ替わってしまうリスクがあります。このリスクの一つが、EC化の遅れなのです。競合他社がEC化を進めている場合、後れを取ると顧客を失い、市場シェアを奪われる可能性があります。
ただ、すでに多くの競合他社が自社サイトを立ち上げてインターネット上に公開している場合、慌ててその後を追ってもほかのサイトに埋もれて存在感が薄れてしまう恐れがあります。したがって、存在感を強めるためにも、競合他社よりわずかでも先手を打つことが重要になるのです。その結果、BtoB-ECを始める企業が増え、BtoB市場は急拡大しています。
3-2.デジタル化の一環
日本では働き方改革によって、業務の効率化を急ぐように要請されています。業務の効率化を目的として、多くの企業では「デジタル化」を推進しています。BtoB-EC導入によって、受発注業務の自動化、データ分析、在庫管理など、さまざまな業務を効率化できます。その結果、人件費や時間のコスト削減、従業員の負担軽減、生産性向上につながります。
現代はデバイスの普及によって誰でも手軽にインターネットにアクセスし、新たなアプローチを行えるようになりました。インターネットを用いたビジネスモデルを展開することで、業務負担を軽減できます。アナログなやり方だと時間や手間がかかり、多くの人手が必要だった業務もあるでしょう。こうした従業員を業務から開放し、今までかかっていた時間をほかのことに有効活用できます。
3-3.販路の拡大
BtoB-EC導入は、企業にとって大きな販路拡大のチャンスとなります。インターネットを通じて、商圏を日本全国へと広げることが可能になり、取引先候補を大幅に増加させることができます。これまでEC事業に力を入れていなかった企業の場合は、従来の営業活動では訪問できる顧客数に制限がありました。しかし、BtoB-ECを導入することで、インターネットを通じて全国の顧客にアプローチできるでしょう。
また、自社が興味を持ったわけではなく、取引先の要望をくみ取る形で近年BtoB-ECを始める企業が非常に増えています。例えば、インターネット注文を希望する取引先が増えたことをきっかけに、BtoB-ECを導入したケースなどです。BtoB-ECの導入により、これまでとは異なる新たな取引先の開拓や取引先の満足度向上等が実現できるでしょう。
4.BtoB-ECの2つの形態
BtoB-ECの形態には大きく分けて2つのタイプがあります。それぞれどのような特徴があるのか、見ていきましょう。
4-1.モール型ecサイト
モール型ECサイトとは複数のECサイトが集まり、ショッピングモールを形成するものを指します。モール型ECサイトのメリットは、「集客力が高い」ことです。モールそのものに知名度があるため、顧客を集めやすいという特徴があります。また、SEOに強く上位表示されやすいため、効率的に顧客を獲得できます。
さらに、「初心者でも立ち上げが簡単」なこともメリットのひとつです。モール独自の販売システムが構築されており、ECサイトへの知識が少ない初心者でも短期間で立ち上げができます。
一方、モール型ECサイトは「競合他社が多数存在する」というデメリットがあります。モール自体にブランド力があるため、当然他の企業も集まりやすいのです。高い集客性を利用できる反面、同じモール内に競合他社が多く、顧客争いや価格競争が激化しやすいことが難点です。さらに、サイトページのデザインにも制約があるため、ブランディングがしにくく、ECモールの中の一店舗として認識され、自社の存在を認知してもらうのが難しくなります。
加えて、「各種手数料がかかる」というデメリットもあります。モール型ECサイトを利用するためには、出店料や利用料といったさまざまな費用がかかります。モールの規模が大きいと、その分費用も高額になりやすいため注意しましょう。
4-2.自社ECサイト
自社ECサイトとは、独自に構築したサイトのことをいいます。自社ECサイトは「自由度が高い」ことが特徴です。サイト制作における制限がなく、独自のデザインでブランディング化を図ることができ、将来的なリピート率向上を狙えることがメリットです。加えて、「利益率が高い」こともメリットと言えます。モール型ECサイトとは異なり、各種手数料が発生しません。また、競合他社との価格争いを起こすリスクも少なく、長期的に見ると高い利益を期待できます。
一方、「自社で集客・販売の仕組みを構築する必要がある」ことがデメリットです。自社でECサイトを運用して利益を上げるためには、SEOやマーケティングなどの対策が不可欠です。長期的な視点で作り込みを行い、さまざまな施策を講じることが重要になるでしょう。立ち上げて日が浅いうちは、既存顧客を自社サイトに誘導することも一案です。このような誘導を続け、時間をかけて徐々に自社ECサイトの顧客を増やしていく地道な努力が必要になります。
5.理想は自社ecサイトへの顧客の固定化
BtoB-ECを始める場合は、自社ECサイトを立ち上げて顧客を固定化することが理想といえるでしょう。なぜなら、自社ECサイトであれば手数料がかからず、利益を上げやすいためです。リピート顧客を十分に確保できている状態であれば、自社ECサイトをメインに運用すると良いでしょう。
ただし、BtoB-EC立ち上げ当初は自社ECサイトの知名度が低く、顧客や注文を思うように得られない可能性があります。一方、モール型ECサイトは知名度が高く集客力に優れており、新規顧客の獲得に向いています。自社ECサイトを円滑に運用するためには、双方の利点を有効活用することが重要です。つまり、「自社ECサイトとモール型ECサイトを並行して運用する」と良いでしょう。それぞれのメリットとデメリットを理解し、状況に合わせて使い分けることで、販路拡大や顧客満足度向上に繋げることができます。
自社ECサイトを立ち上げた際は、独自の呼び込みを行います。例えば、既存顧客に向けてアナウンスを行うと効果的です。アナログな受発注を自社ECサイトでの取引に替えていきましょう。それと並行して、モール型ECサイトでつかんだ新規顧客へもアプローチを行います。自社ECサイトに誘導し、固定化を目指しましょう。
それぞれの特性を理解し、効果的に活用することで、既存顧客の囲い込みと新規顧客の獲得の両方を叶えられます。既存・新規のどちらの顧客にも声かけをして誘導すれば、最終的には自社ECサイトでの取引をメインに行えるようになるでしょう。
6.BtoB-ECカートで自社ECサイトを構築
自社ECサイトの立ち上げには「BtoB-EC専用カート」の活用がおすすめです。BtoB-EC専用カートとは、法人間取引に特化したショッピングカートです。導入することで手作業が多かった受発注業務を効率化できます。
また、BtoB-EC専用のカートで自社ECサイトを立ち上げると、発注側も簡単に操作できるというメリットがあります。受注側だけではなく発注側の作業も効率化できるため、既存顧客をスムーズに自社ECサイトに誘導できます。
加えて、受発注にともなう請求業務もデータの転記が不要なことがメリットです。使い勝手が良く利便性が高いシステムだと顧客に理解してもらえれば、リピート率の向上を期待できるでしょう。なお、BtoB-EC専用カートのなかにはクローズドサイトとセミクローズドサイトのどちらにも対応可能なものもあります。掛率やロット単位での割引など、取引先ごとに細かく設定できます。あらかじめECサイトに必要な機能がしっかりと搭載されているため、安心して利用できるでしょう。
ただ、知識がないと独自のECサイトを構築することは難しいため、このような場合に、便利なのが「ASP」のBtoB-ECカートです。
なお、それぞれシステムの種類による特徴やメリット、デメリットの詳細が気になる方はこちらの記事(受発注システム選定のポイントを詳しく解説!各システムの特徴、メリット・デメリットを紹介)も参考にしてください。
まとめ
市場は日々目まぐるしい速度で変化しています。企業が生き残るためには、市場の変化を敏感に察知し、顧客ニーズに的確に応えていくことが重要です。
BtoB市場やBtoB-EC市場は、近年拡大傾向にあり、多くの企業が参入しています。競争が激化する中、他の企業に先手を打つためにも、速やかに参入を決めることが大切です。取引先と相談しつつ、BtoB市場やBtoB-EC市場に参入してみてはいかがでしょうか。