インターネットの普及やコロナウイルスの影響もあり、BtoCだけでなくBtoBの領域でもオンライン化が進んでいます。この流れに伴い、これまで電話やFAXを通じて行っていた受発注業務をより効率的に遂行するために、企業は受発注システムの導入を検討するケースが増えています。
しかしながら、BtoBにおいては、発注書・見積書・納品書・請求書といった帳票類の種類も多く、システムやツールの種類は多岐にわたるため、最適な選択や、自社に必要な機能の判断が容易ではなくなっている現状があります。
この記事では、それぞれのシステムの特徴やメリット・デメリットについて詳しく説明し、選定ポイントについても紹介しています。受発注システムに興味のある方や、導入を検討されている方ははぜひご参考にしてみてください。
1.受発注システムとは
従来のFAXや電話などのアナログな手法で行われていた受発注などの取引業務を、オンライン上で行うことのできるシステムです。
取引先にとっても、時間や場所にとらわれずスムーズな発注が可能となるため利便性や業務効率を向上させることができます。
また、基幹システムや販売管理システムとの連携機能が搭載されてるシステムもあり、自社の環境に合わせたシステムを導入することでデータのスムーズなやりとりなどが可能になります。
このように、システム導入によって取引の各プロセスをシンプル化できるため、業務効率化や業務負荷の軽減、ミスの削減といったことに大きな効果があります。
2.システムの種類・特徴
受発注システムは、大きく以下の3つに分かれます。それぞれの特徴やメリット・デメリットについて解説します。
2-1 スクラッチ
スクラッチとは、企業が完全にゼロから自分で開発する手法を指します。これにはシステムの要件定義、設計、実装、テストなど全てのフェーズが含まれます。この手法では、既存のシステムやプラットフォームに依存せず、自社独自の完全なカスタマイズが可能であり、要件やニーズに合わせて柔軟に構築できます。また、プロジェクトの進捗や変更にも迅速に対応できるのがメリットと言えます。これにより、企業は自分たちのビジネスに最適なシステムを形成し、効率性や競争力の向上に寄与することができます。
ただし、スクラッチは全て自社開発となるため、プログラミング言語やシステムの知識への理解はもちろん、システム構築に莫大な時間とコストが必要になり、既存のシステムやプラットフォームが提供する利点や機能も手放すことになります。
2-2 パッケージ
パッケージシステムは、既存のソフトウェアやツールを利用してシステムを構築する手法です。この手法では独自のゼロからシステムを構築するプロセスが簡略化され、開発期間を短縮することが可能となります。事前に用意された機能やテンプレートを基にしながら、必要に応じて改修することによって、企業は自社のブランドやビジネスモデルに適したシステムをスムーズに実現できます。
ただし、サーバーの構築等のインフラ面は自社で用意が必要なケースや、バージョンアップや独自機能のカスタマイズ等に細々した手間をかけ続けることが必要になります。そのため、スクラッチに比べてコストは抑えられますが、それでも相応の手間とコストが発生することに留意が必要です。
2-3 ASP
ASP(Application Service Provider)は、アプリケーションを提供するプロバイダーが、クラウド上でサービスを提供する形態を指します。通常ソフトウェアを利用するには、PCやスマートフォンなどのデバイス上にインストールして稼働環境を構築する必要があります。
しかし、ASPサービスであればインターネットを経由して、さまざまなソフトウェアを利用することが可能です。また、プロバイダー側がクラウド上でのメンテナンス等を行うため、インフラの管理やセキュリティについての負担が軽減され、常に最新の機能が搭載されたシステムを安価に利用することができます。
一方で、デメリットとしては、プロバイダーに依存することによる制約が生じる可能性があります。データのセキュリティやプライバシーの懸念、ネットワークの遅延などに考慮が必要になり、適切な利用方法やプロバイダーの選定が求められます。
3. 選定ポイント
そこで、システム選定時に気を付けるべきポイントをご紹介します。
3-1 導入目的を明確にする
企業がシステムを導入する目的は多岐にわたります。システムを導入する際は、まず現行の業務プロセスにおける課題やボトルネックを把握し、解決したい課題を明確にすることが不可欠です。これにより、導入目的が明確になり、適切なシステムを選択しやすくなります。
例えば、業務効率化を図りたい場合は、スムーズな入力や他システムとの自動連携等が可能なシステムを選ぶことで作業時間や人的リソースを削減し、業務プロセスを自動化・効率化することが期待されます。
また、売上向上を目指す企業は、マーケティングやCRMを強化するためのシステムを選ぶことで、売上の拡大を期待できます。
導入目的を明確にせずにシステムを選定すると、期待した効果が得られないだけでなく、リスクも生じます。業務効率化を目指してシステムを導入したが、業務プロセスに合わないシステムだったために作業効率が低下したり、トラブルが発生したりする可能性があります。
また、他システムが管理するデータや担当する業務範囲を明確にしていない場合には、重複や抜け漏れなどの問題が発生したり、システムがオーバースペックになったりする可能性があります。したがって、導入目的を明確にし、それに応じて業務フローの見直しや他事業部の巻き込みも行いながら、それに適したシステム選定をすることが成功への近道です。
3-2 導入時期
システムを導入する際には、適切な導入時期を見極め選定することが重要です。導入時期は、企業の事業フェーズや業界の状況、競合他社の動向等を考慮して決定する必要があります。
例えば、受注件数や業務量が増加し現在のリソースでは回しきれなくなった場合には、早急にシステム導入を進めることが望ましいです。そのため、要件定義や開発、カスタマイズ等に大幅な時間を要するスクラッチやパッケージは、このような場合には適さない可能性があります。
一方で、業務プロセスの大幅な変更を予定している場合や他システムとの連携開発・改修が必要な場合は、事業の成長計画やシステム戦略に合わせて導入時期を検討することが必要となり、急いで導入することよりも慎重な検討が必要です。そのため、自社の売上規模や業界の状況、競合他社の動向に合わせることも大事ですが、自社の目標達成のために最適な時期でシステム導入を検討することが必要です。
3-3 費用対効果
企業がシステムを導入する際には、単にシステムの導入コストだけを見て判断するのではなく、総合的な効果や利益を考慮することが不可欠です。システム導入には初期導入費用だけでなく、運用や保守にかかるランニングコスト、業務効率化や売上向上などの効果も重要です。
そのため、システム選定においては、単なるコスト面だけでなく、将来の業務拡大や変化にも対応できる柔軟性や、顧客満足度向上などの利益を総合的に考慮することが必要です。
高い導入コストでも、システム導入によって生じる総合的な利益が大きければ、そのコストは投資として十分に価値があると言えます。したがって、システム選定に際しては、単にコストだけでなく、総合的な効果や利益を見据えて検討しましょう。
3-4 サポート体制
システムを導入する際には、十分なサポート体制が必要です。導入時のトレーニングやカスタマーサポート、障害対応などが含まれます。導入後のサポートが特に重要であり、素早い対応や適切な解決策は、システムの安定運用に直結します。
サポート体制が十分でない場合、システムトラブルや問題が発生した際に迅速な対応ができず、業務の中断や損失が生じる恐れがあります。問題が生じたときに迅速で効果的なサポートが得られるかどうかが、現場スタッフの業務効率や得意先への信頼性を向上させる鍵となります。
4.まとめ
このように、自社に最適なシステム選定は、業務効率向上だけでなく、競争力の強化や既存顧客のロイヤルティの向上にも寄与します。そのため、自社の会社規模や事業フェーズ、業界、人材に応じてシステムを検討することが必要です。
資金力が豊富で特殊な商材や業務フローを有し、WEBやITに精通した担当者が在籍している企業には、「スクラッチ」のシステムが適しています。
一方で、少し予算を抑えつつもどうしても必須な機能があり、カスタマイズが必要である企業は、「パッケージ」のシステムを検討してみてください。
新規事業の立ち上げや受発注システムの導入が初めての企業様で、「社内にあまりノウハウがない」「コストを抑えてなるべく早く導入したい」といった場合は、「ASP」のシステムを最初に導入することがおすすめです。クラウド上でサービスを提供しているため導入するまでの期間が短く、基本的な機能は予め揃っています。そのため手軽にすぐ始めることができ、比較的安価で利用することが可能です。
どのシステムも単に導入すれば良いというわけではありません。システムを活用して業務を効率的に進めるためには、システムを理解し、ニーズや状況に合わせて柔軟に対応することが成功への鍵となります。